DevOpsDays Tokyo 2023

2023年4月18日〜19日の2日間にかけて行われた、DevOpsDays Tokyo 2023 というDevOpsにフォーカスしたカンファレンスにオンラインで参加してきたため、そのレポートと感想です。

このイベントはDevOpsを実現するための自動化、テスト、セキュリティ、組織文化などに視点を置いた事例やプラクティスを日本国内、海外からスピーカーを集め、共有するイベントです。

DevOpsDays Tokyo 2023 タイムテーブル

4月18日(1日目)

DevOps, Development Cadence and the Product Life Cycle

レガシーコード改善ガイドの著者 フェザーズ氏の基調講演
開発および納品の一般的な問題からKent Beckの3Xをベースにしたモデルの模索、DORAメトリクス指標のFour Keysの扱いについて

講演中でよく出てきたワード
Four Keys
DevOps Research and Assessment(DORA)チームが確立した開発チームのパフォーマンスを示す4つの指標。デプロイの頻度、変更のリードタイム、変更障害率、サービス復元時間。これら4つの値を測定し、継続的に改善を繰り返すことで、ビジネス成果を向上させようというもの。
ほかにもFour Keysをテーマにした講演がいくつかあったので注目度が高いのかもしれません。

Team Topologies
ビジネスチームとテクノロジーチームを編成して、フローに合わせてチームの相互作用を最適化することに重点を置いたアプローチ。

Kent BeckのExplore / Expand / Extract(3X)
実験を試して探索する段階(Explore)、ボトルネックを取り除いて拡張する段階(Expand)、継続的に収益性を高める段階(Extract)の3つのプロダクト開発フェーズの曲線のこと。

ソフトウェア開発のチーム作りにおいて、立ち止まっていち早く開発が再開できるようになるスキル、デプロイ頻度や問題の修正を早くするといったことを常にするのではなくて、止まっても早く通常の状態に戻れるスキルが重要。人間なのでリズムで動いている。人間を機械のように扱うのではなく、サイクルに合わせて自分達が動けるようにする。そうすればチームがより良い方へ向かっていくという話でした。

講義の内容についていくつか疑問や賛同の声がでていました。

「適切なリズムはどのくらいでしょう?」
正しい答えはなく、3XのExploreにある通りチームに合ったものを探さなくてはならない。

「チームにはなぜ緩急をつける必要があるのか?ステークホルダーにその「緩」の状態をどう説明するか?」
緩急をつけると生産性が高くなる。プロダクトのコードを理解するのと同じようにお客様との理解を深めて説得することが必要。タスクが詰まっているときや燃え尽き症候群は1つのレバーで解決できるものではないですが、新しい人を入れてみたり別の所に異動したりして転換させることで解決できる可能性がある。

筆者自身はソフトウェア開発には詳しくありませんがどこの開発にも共通している問題があるのがわかりました。

組織のサイロを打破する!エンジニアがオーナーシップを持って共創する開発プロセス「インナーソース」

組織のサイロ化(情報の連携が上手くいっていない状況)を打破してエンジニアが幸せにコラボレーションするための考え方であるInnerSourceの事例紹介について

InnerSource
オープンソースの原則を社内のソフトウェア開発に適用すること。ボトムアップのコミュニティである。

企業文化や組織内部の制限を尊重しつつ、コード資産を共有できるようにするために、文化的に変革して組織のサイロを壊していくという話でした。

よくある誤解として、ツールを入れるとできる、GitHubを使えばできる、というのは誤り。コードの透明性を上げることはできても組織のコミュニケーションの透明化はできない。InnerSourceを実現する第一歩は信頼と透明性のあるコミュニケーションを増やすこと。ドキュメントを発見可能である、コードをコンパイルおよび実行できたり一部を使用できる、問題を報告・質問・機能提案ができる、チームがメンテナンス可能である、この4つが大きなポイントになっている。

日本の企業では多くのソースコードがプロダクトではなくプロジェクトに紐づいている。プロジェクトの終わりが来るとコードがメンテナンスされなくなる問題がよくある。また、となりのチームへの貢献がどう評価されるか。稼働時間の扱いがどうなるのか。といったような問題をプログラムオフィサーが解消に導いていく必要があるそうです。

実践する前にInnerSource Patternsというプラクティス集があるので見ておくと良さそうです。文化・組織によっては難しい部分もありますがこれができるのであれば組織の摩擦が減って円滑な開発ができるようになるでしょう。

4月19日(2日目)

ノリと組織 Groove & Organizations

デジタルアニメーションスタジオ ポリゴン・ピクチュアズ CEO 塩田氏の基調講演
塩田氏が考える、オモロいものを創造するための仕組み、場、組織づくりについて

ミッションとして「誰もやっていないことを圧倒的なクオリティで世界に向けて発信していく」を掲げている。これを捉えて媒体・時代・場所において最適なものを提供したいと考えている。企業のノリを如何に維持するかさじ加減を調整するのが経営だと考えている。そして、どうノリを促すかが重要になってくる。

「リモートワークで企業における居場所とは?」
コンピュータグラフィックスを用いて知覚に訴え、物語るストーリーテラーであるために感じる力、人の心を動かす力が必要。そのためのクリエイティビティは偶然の出会いや話し合いで生まれる。出会いが生まれるようにするため、物理オフィスを働く場から集う場へ変化させている。

組織の在り方をエントロピー増大の法則を使って例えていました。自律的に動いて壊し、変化して進んでいく動的平衡で組織が成り立っていける、そういう場を作れるといい組織と言えるのかもしれません。

最後に

多数の講演のうちの一部を紹介しました。

DevOpsDaysのイベントに参加するのは初めてでしたが、学ぶことの多いイベントでした。基本的には文化の作り方、チームワークの醸成についての講演が多く、この部分について悩んでいる、ほかの人の意見も聞きたい、2日目のOpen Space TechnologyでDevOpsの成功事例や失敗談などを話し合いたいというかたにはぴったりなイベントだったのではないでしょうか。筆者自身はまだチーム作りはやったことがありませんが今回の体験を活かせられればいいと感じています。

最後の閉会式ではイベントに関してのアンケートをタグクラウド状にして発表されてました。ワードに「bento」や「ノリ」がたくさん紛れていて楽しげな閉会式になっていたのが印象的でした。